インタビュー

【連載第1回】大西理の「通販/EC業界、いま話したい人」 【マードゥレクス藤原尚也さん】
デジタルマーケティングの今とこれから~前編~

通販業界の最前線を長年走り続けてきた大西理さん。大西さんが「いま話したい人」に話を聞き、これからの通販/ECについて考える対談シリーズが始まりました。第一回のゲストは、マードゥレクス取締役社長の藤原尚也さん。黎明期からECに従事してきたお二人が考える「デジタルマーケティング」の重要性とは。

大西さん)
御社の通販は、これまで紙媒体を主体としたダイレクトマーケティングで成長してきたと思いますが、最近はデジタルマーケティングも強化されているそうですね。

藤原さん)
そうですね。当社の化粧品ブランド「エクスボーテ」は、卸と直販で構成されているのですが、直販売上は紙媒体に支えられてきました。特に、既存顧客向けに発行している会報誌からの売上が中心です。新規開拓には新聞広告を使っていますが、紙媒体がダウントレンドなので、デジタルマーケティング強化を図っているのです。

大西さん)
新聞広告だと、売上は取れてもその後の施策がうまく回せない。だからこそ、デジタルメディアで新規顧客を獲得し、効果的にCRMを行い、LTVを上げていくという目標ができたわけですね。

藤原さん)
その通りですね。2017年に掲げるデジタルマーケティングのテーマは2つあって、そのうちの1つはECサイトに訪れる人を増やすこと。紙媒体だけでなくWEB上でのプロモーションやPRにも力を入れて、ECサイトのインプレッションを増やすことです。つまり、売上げにつながる優良顧客をいかに呼んでくるかが重要になっています。もう1つはリピート率を上げること。購入後のリレーションをしっかりと作り、LTVを最大化していこうと。

私が当社に入り半年ほど経ちますが、ECサイトの売上げは前年比120%を超えました。新規顧客は140%増。そこからメールやLINE@などのリテンション施策を講じています。

集客のところでは検索対策の重要性は言わずもがなですね。リスティング広告とSEOをきちんと行えば、しっかりと注文が取れます。リスティング広告単体だけで見た時にCPA効率が悪いキーワードでも、リターゲティングやリマーケティング広告を活用して、刈り取っていけば良いわけです。

大西さん)
ややもすると点の施策で終わってしまうところを、藤原さんはちゃんと面で考えてらっしゃるのですね。点で見てしまうと、効率が悪くて予算が回せないこともあるけど、リスティング広告とSEOは根気強く継続することで線や面の施策につながるわけですね。

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藤原さん)
そうですね。あと、今年は楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングなどモール店もしっかり運営することも意識しています。Googleのショッピング広告はパフォーマンスは良いのですが、各モールでも同じような広告が始まってくるはずなので、対策しておかない手はないですね。

大西さん)
WEB上での顧客接点を増やして売上につなげるということですね。また、御社はコンテンツマーケティングも色々やられている印象がありますが。

藤原さん)
はい。例えば、タレントさんと契約し、当社商品でメイクを施していただき、コンテンツを作っています。ただ、コンテンツはおもしろいだけではダメで、どれだけ集客につながるかを意識してます。

他社では、コンテンツの読了率をKPIにしていると耳にしますが、当社では読了率は全くと言っていいほど見ていません。それより、狙っているキーワードの検索で上位表示されているかどうかが大事で、アクセスに貢献しているかを重視しています。コンテンツをマーケティング施策として見た場合にはボリュームが勝負で、コンテンツ単位の読了率で左右されるものではないと考えているからです。

大西さん)
なるほど。検索エンジン側も良いコンテンツを上位表示させる仕組みなので、理にかなっていますね。他に注目しているデジタルマーケティング手法はありますか?

藤原さん)
動画に挑戦したいですね。動画と言っても、TVCMや大型タイアップのようなものではありません。限られた予算の中で工夫して作り、SNSなどを使って様々なデバイスに効率的に露出し、購買行動につなげていくというものがいいですね。

大西さん)
私も動画に注目しています。今年こそ来るぞとか言われつつ、本当はいつだろうって感じもしますが、結局、企業やブランドによって新しいツールや手法を導入するタイミングはそれぞれ違うわけですからね。そういう意味では、藤原さんたちにとって、次は「動画」だと。

藤原さん)
注目のひとつですね。しかも、動画はデジタル世界だけのものではありません。例えば、当社の場合、ターゲット層の人がよく利用している駅で配信することを前提として動画を作っていて、動画を見た人がリアルの店舗に足を運ぶような導線も考えています。

大西さん)
なるほど。新しいことにも積極的に取り組まれていますね。

藤原さん)
はい。ただし、新しいものなら何でも導入するわけではありません。まずは、自分たちがどこに課題を感じているか明確にしますし、新しいツールを使うとどんな効果があるのかについてもシビアに検討しています。でなければ、せっかく新しいツールを導入しても、効果を発揮できずに終わってしまいますからね。

大西さん)
あくまでもツールありきではないということですね。課題をどう解決するかにフォーカスした結果、こういうツールが良いという考え方でなければいけませんよね。さて、最近では、通販/ECの業界でも「AI」が注目されています。まだまだ「可能性」の域を出ず、キーワード先行という感じもありますが、きちんと使いこなせなければ意味がないですよね。

藤原さん)
AIは、私も正直まだ分からないですね。それよりもVRのほうが興味があります。ECの世界でも、まるで店舗に訪れたかのように、三次元で楽しみながら洋服や化粧品を選ぶことができるようになるかもしれませんよね。そうなったら、ECの可能性がさらに広がります。

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大西さん)
VRはおもしろそうですよね。買い物はいわば「体験」。買い物をするときには脳が特別な動きをしているので、そのワクワク感を演出するにはVRは最適なツールかもしれません。VR技術の進歩は、小売業にとってのイノベーションになり得る気がします。誰でも気軽に店舗を訪れることができるという、店舗の在り方にまで影響を与える可能性を秘めています。

数年前からECに対するハードルが格段に下がってきている今、ECでの買い物をいかに楽しくするかも、通販/EC事業者は問われているように感じます。ワクワクする購入体験をオンラインで実現することが、未来に向けてのテーマなのかもしれませんね。

新しいショッピング体験を通じてすべての人々を幸せにする。そんな使命感を持って、黎明期からECに携わってきた者同士、これからも業界を盛り上げていきたいですね!

後編に続きます