インタビュー

【連載第3回】大西理の「通販/EC業界、いま話したい人」 【BEAMS 矢嶋正明さん Part1】
個人を押し出すBEAMSのDNA

通販業界の最前線を長年走り続けてきた大西理さん。大西さんが「いま話したい人」に話を聞き、これからの通販/ECについて考える対談シリーズ。第二回のゲストは、ビームス開発事業本部EC統括部副部長の矢嶋正明さん。同社のショップスタッフから内勤部門を経て、EC事業を切り拓いてきた矢嶋さんが感じる、BEAMSに流れるDNAとは。

大西さん)
矢嶋さんとは以前にもお会いしたことはありましたが、こうして話を伺えるのを楽しみにしていました。ファッション通販の歴史は、BEAMSを抜きには語れないですからね。

矢嶋さん)
ありがとうございます。このような機会を頂けて、こちらこそ光栄です。

大西さん)
早速ですが、矢嶋さんにぜひ伺いたい話があって。百貨店の売上げが2年連続で6兆円を切ったり、海外では大手小売企業が店舗閉鎖などのリストラを進めたりと、小売業を取り巻く環境に逆風が吹いていますよね。本来ショッピングって楽しいもの、ワクワクするものなのに、小売業界は元気がない。この現状をどう思われていますか?また、業界を盛り上げるためにどんなことが必要だと考えていますか?

矢嶋さん)
当社は、業界としてどうするべきか?を考えるというよりも、自分たちが面白いと思うことから実践するような企業だと思っています。どちらかといえば、視点が逆。マーケットを俯瞰して戦略を立てるほうが賢明だとは思うのですが、おそらく私たちが向かっているのはもっとパーソナルな世界。当社の代表がいつも言っていますが、社員自らがワクワクするものを発信していくと「この指とまれ」と言わんばかりに、徐々に多くの人が集まっていくというかクラスタが生まれるんですね。一つひとつのクラスタは専門性が高かったり、オタク気質だったりするのですが、その集合体として徐々に大きくなっていく。そういう文化をもった会社なのです。ある種WEB的と言えるかもしれませんし、こういう方向性を得意としてきたからこそ、これまで40年間続けることができたのだと思います。

現在の新公式サイトも、個人の強みをデジタルでどう表現したらいいか?を考えて抜いて、でき上がったものです。それぞれの人が「俺、本当にこれが好きなんだよね」という情報を発信するプラットフォームに行きついた結果です。

大西さん)
それは、私もビームス様に対して感じていたことでした。良い意味でのアクの強さがありますよね。専門性が高いオタクな人が中心にいるからこそ、周りに対する糸も太いというか。

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矢嶋さん)
一つひとつの円は小さいけど密度は濃い、という感じですかね。実際、当社の社員は個性が強くて、動物園に例えられたりもします。トラやライオン、ゾウもいれば、それを扱う猛獣使いもいる、みたいな。みんなファッションが好きなのは共通ですが、その上で、ライフスタイルにもこだわりがあって、スポーツに打ち込んだり、イベントでDJをやったり、それぞれが楽しんでいますね。

そういった個の力を大事にしている会社で、その最たる例が、「BEAMS AT HOME」という書籍に集約されています。1冊の中に100名以上のスタッフが登場して、自宅を公開していて、もう3冊目まで出ています。日本の小売業は、どちらかと言えばスタッフより商品にスポットが当たりますが、私はスタッフ個人がワクワクできないことには始まらないと思いますね。

私も、販売員をしていた時から「BEAMSの洋服が本当に好きだから」という想いを持って店頭に立つことや、お客様との会話、コミュニケーションを重視するように指導されてきました。お客様からは「今日着ているジャケット、かっこいいですね」「普段はどういうコーディネートをしているのですか?」などと話があれば、そこから会話を広げて、お客様のイメージに最適だと思うものを提案していました。

あと上司や先輩から、当たり前ですけど、商品の良さやこだわり、着こなしを深く勉強するように言われましたし、逆にモノだけを売ることはよしとされなかったですね。お客様にベストなものをご提案して、本当に気に入っていただいて初めてお買い上げいただく。サイズ・色の取り寄せも含め、信頼の積み重ねを大事に指導されてきました。

大西さん)
それはすごいですね。DNAに揺るぎがないことは、企業にとって非常に大事なことだと思います。そこがブレてしまうと、例えば社長が変わった時など、なにかの拍子で崩れて「らしさ」を失ってしまう。「らしさ」を失わないこと、DNAがきちんと継承されてきたことが、ビームス様の良さなのかなと感じました。

矢嶋さん)
ありがとうございます。当社は、そういう方向で特化しているのかもしれませんね。

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大西さん)
規模だけを追いかけているわけではない、と外から見ていても感じます。

矢嶋さん)
もちろん、売上げも大事だと思っています。ただ、売上げ規模よりは商品の良さとコラボなどのユニークさ、そして利益を出す方向は重視している会社です。

大西さん)
もちろん、売上げは大事ですよね。ただ、決して売上げファーストではなく、お客様に満足していただいた先に売上げがついてきているという印象を受けました。お話をしていて、BEAMSのDNAを強く感じました。

Part2ではそんなBEAMSのDNAを受け継ぐ人財育成について、詳しく伺いたいと思います。

Part2 「BEAMSのDNAを引き継ぐEC人財の育成

Part3「BEAMSが理想とするECとリアル店舗の関係性