インタビュー

【連載第6回】大西理の「通販/EC業界、いま話したい人」 【FLANDRE 末廣勇太さん Part1】オムニチャネルで提供する“アタリマエ”の消費体験

通販業界の最前線を長年走り続けてきた大西理さん。大西さんが「いま話したい人」に話を聞き、これからの通販/ECについて考える対談シリーズ。

第三回のゲストは、株式会社フランドル 営業本部 メディアコマースチーム部長の末廣勇太さん。INEDやef-de、CLEAR IMPRESSIONなど、数多くの人気ブランドを展開する、FLANDRE ONLINE STOREの運営に込める想いを伺いました。

大西さん)
FLANDRE ONLINE STOREは、今年(2017年)で10年目 を迎えられたそうですね。立ち上げの背景についてお聞かせください。

末廣さん)
FLANDRE ONLINE STOREをオープンした2008年春、当時はレーベルの全盛期。マガシークやマルイウェブチャネル、スタイライフ、ファッションウォーカーなどのファッションECモールで、“赤文字系ブランド”が年間何億円という売上げを誇っていた時代です。モールへの出店も考えましたが、他社に追随するカタチで、自社ECサイトを立ち上げました。

大西さん)
ファッションEC市場が急成長し、「ファッション雑誌の掲載商品がインターネットでも購入できます」そうしたマーケットが市民権を得た頃でもありますね。それで、ブランドのMD担当だった末廣さんがどういう経緯でECに異動することになったのでしょうか?

末廣さん)
2008年当時の私は、自社ECサイトが立ち上げられたことすら知りませんでした。まず声を掛けられたのは、ブランドの事業部長をやっていた元上司。部下1名を連れて行くことを許されて、私が異動することに決まったんです。2009年のことです。

それまでは、5~6人のメンバーが運営していました。私たち2人はインターネット素人同然で、現場を見ながら、信頼できる人にアドバイスをもらいながら、ひたすら勉強を積み重ねる日々でした。

どのようにECサイトが出来上がるか。商品アップにはどんな情報が必要か。写真撮影のスキルや物流、ランディングページのデザイン。SEOやリスティングなど、初めて耳にする言葉も多かったですね。

商品情報は生産部門からもらい、手打ちで入力。会社の地下に撮影ブースを設けて、私がカメラマンを務めることもありましたね。

大西さん)

いわゆる、「ささげ」業務*1ですよね。私もかつて、自ら商品スペックを入力し、コピーを考え、モデルまで務めたことがありましたし、当時のEC業界ではそんなに珍しいことではなかったですよね。

末廣さん)

最初は、商品が1点でも売れると、隣の部署から商品を受け取り、メール便で倉庫に送り、物流勤務の社員が手書きで伝票を書き、発送していたのです。最初は倉庫も自社で運営していましたが、さすがに業務が回らなくなって。外部に出す部分を決めて、フルフィルメントサービスを活用する等して、少しずつ今のカタチに落ち着きました。

最初に倉庫を外部に出すときは、大手を含め、いくつも倉庫を見学しましたが、最終的に、明るく元気な主婦の方々が活躍されている会社への依頼を決めました。視察に行った時に気持ちのいい挨拶で迎えてくださいましたし、洋服のたたみ方や梱包など、他社よりも優れたサービスを提供されていたからです。

大西さん)

そういう方々なら、任せるのにも安心感がありますよね。トラブルが起きたとしても、「あの人たちが一生懸命やってのミスなら仕方がない」と思える気がします。

末廣さん)

それに、お問合せやご意見、トラブルへのフォローは、企業の責任だと思います。「昨日注文したのに、まだ発送メールが届かない」との問合せがあって、倉庫に確認したところ、発送ミスが発覚したこともありました。その時は、僕が自分で車を運転して、2時間かけてお客様のご自宅まで届けました。

他にも、夜の8時過ぎにミスが発覚して、鹿児島から宮崎まで直接お持ちしたことも。自分たちのミスですし、できることをするのは当然という社風があるのです。結果的には、お詫びを申し上げたところ、お礼の言葉まで頂いてしまいました。

また、「今日急ぎで喪服が必要だ」とのご相談を受けて、店舗に立ち寄る時間を省くために、駅で待ち合わせてお渡ししたケースもありました。非効率的に思えることでも、そういう接客マインドは大事にしていきたいですね。

大西さん)

ロイヤリティの高い方ほど、ご意見を下さることも多いので、逆にありがたいですよね。また、そこまで対応できる企業なら好感を持っていただけると思います。

そのように、「ありがとう」の言葉が直接聞けるのが店舗接客の醍醐味であり、モチベーションアップにもつながっていくのでしょうね。そのためにデジタルを駆使して力を貸すのも、ECの重要な役割なのかもしれません。

末廣さん)

結局、ECにせよ店舗にせよ、おたがいを補完することでお客様のリピート購入につながれば、それでいいと思いますね。

EC部門では今年、「店舗の役に立つことだけをやる」という目標を掲げました。店舗の役に立つかが判断基準のすべてなので、それを念頭において仕事をしてほしい。どんどん新しいメンバーに加わってもらえるように、そういう簡単な指針にしたのです。

大西さん)

ことに近年、郊外を中心に百貨店のクローズが相次いでいますからね。館がなくなれば、お客様を逃すことにもなりかねない。企業として顧客資産を失うことになるだけでなく、お客様にとっての利便性を考えても、オムニチャネルの推進は急務だと思います。

末廣さん)

そうなんですよ。とは言え、求められることは至ってシンプルですよね。店舗とECいずれを選ばれても、きちんとした対応ができる企業体制を整えるということだけ。それこそが、真の意味での「オムニチャネル」ではないかと思います。

大西さん)

同感です。オムニチャネルは、そういう接客マインドを実現するための仕組みだということかもしれませんね。選ばれるブランド・店舗になるには、不便のないショッピング環境を整えることに尽きると思います。特別なサービスを用意する必要性はなく、消費者として「当たり前にできたらいいな」と思うことを実現するのみです。

例えば、ECで購入したものの店舗受取や、店舗になかったものの宅配が可能になれば、非常に便利ですよね。これまでは、その場に在庫がなければ買っていただくことができませんし、他店で買われてしまうとうことなのでウォレットシェア観点では損失です。

末廣さん)

そうですね。企業からすれば機会損失、お客様からすれば不満。それを解決するために、企業の事業規模に応じた環境整備を目指したいところですね。店舗とECの名簿を統合できれば、お客様を把握し、在庫を効率良く回すこともできます。その環境が整ってようやく、新たなサービスもご提供できるようになるのかもしれませんね。

大西さん)

そうなれば、ECの存在意義や役割はますます大きくなっていきそうですね。

FLANDREの皆様が素晴らしい接客マインドを持って、FLANDRE ONLINE STOREや店舗を運営されていることが改めて感じられました。

Part2では「アパレルECにおいて求められる販売スキル」について、詳しく伺いたいと思います。

*1ささげ業務・・・「撮影」「採寸」「原稿」業務のこと