決済

【連載第18回】 多通貨決済サービス

越境ECのキーとなる多通貨決済サービスとは?
日本にいながら現地通貨での決済サービス提供が可能に

2015年は、さまざまなニュースサイトで“越境EC”が取り上げられました。今回は、越境取引時に便利な決済サービスであるといわれる多通貨決済サービスについて紹介します。

国内の決済代行事業者と契約して日本円で売上金が入金

これまで、日本から海外に商品を販売する場合、現地の決済代行事業者と契約するなど、現地で展開する企業との提携が必要でした。近年は、Adyen(アディアン)やWorldpay(ワールドペイ)など、グローバルに展開する決済代行事業者が登場しており、海外の大手企業が海外展開を図る際に活用されていますが、国内の決済代行事業者と契約しながらも、現地でビジネスを展開できるのが多通貨決済サービスとなります。多通貨決済サービスでは、国際ブランドのVisa、MasterCardなどによる決済が可能です。また、国際ブランドが搭載されているカードであれば、クレジットカードに加え、前払いのプリペイド、即時払いのデビット決済も同様に利用できます。

たとえば、ECサイトが3カ国で自社の商品を販売したいと考えた場合、各国の決済代行事業者とそれぞれ契約するのは労力を伴います。また、日本人は英語に慣れていない方も多いため、そのやり取りも課題となるでしょう。その点、多通貨決済サービスを利用すれば、海外の決済代行事業者と接続する必要なく、現地通貨での決済の提供が可能で、日本円で売上金額が入金されます。国内の決済代行事業者では、少ないところで数十通貨、多いところで約150通貨まで対応しているようです。

たとえば、香港において日本のWebサイトにアクセスし、商品を購入する場合、香港在住者への請求は、カード会社により円から香港ドルに転換されます。また、各国通貨建ての金額を各国の通貨に換算する際、上乗せ(マークアップ)手数料が適用されます。通常、海外での決済サービスを利用した場合、請求書が届いて初めて、海外での請求額を把握できますが、決済と同時に請求金額を知ることができます。そのため、ビジネス利用者などに喜ばれるサービスとなっています。

多通貨決済サービスはDCCとMCPの大きく2つに分別

多通貨決済サービスは、DCC(ダイナミック・カレンシー・コンバージョン)とMCP(マルチ・カレンシー・プライシング)の大きく2つに分別されます。DCCは、インバウンド対応として、リアル加盟店の導入も増えてきました。たとえば、海外への旅行やビジネスが多い方は、クレジットカード決済時に、日本円と自国通貨の金額が表示され、どちらかの選択を求められたことがあると思います。DCC に対応したクレジットカード決済端末を使用すると、円建て決済か自国通貨決済のうち、どちらかを選択できるようになります。

DCCの特徴は、ECサイトが外国表示の管理は不要な点です。商品の決済時に為替手数料、マークアップ手数料を同時に計算し、当日の為替レートを使って外貨を別々に表示可能です。また、エクスチェンジレート(為替手数料)も表示する必要がありますが、利用者はこれを見てどちらかを選択可能です。当日の為替レートが反映されるため、日時で料金が変更される旅行や航空チケットなどは、DCCが有効となっているそうです。

なお、DCCは、ビジネス利用者には便利な手段ですが、日本円を選択した場合、その手数料が差し引かれてしまいますので、請求を低く抑えたい消費者は外貨を選択することをお勧めします(消費者の心理としては、日本円を押してしまうと思われるため)。

料金が固定されたMCPはデジタルコンテンツや通販に有効

一方、MCPは、予め外貨通貨の販売額を定めることができる方法となります。DCCは、国際ブランドとのルールにより、円と外国通貨、その時の為替手数料、エクスチェンジレートを表示しなければなりませんが、MCPは外国通貨のみを表示可能です。また、為替手数料やマークアップ手数料に関しては、MCPはECサイトが負担します(DCCはユーザー負担)。MCPは料金が固定されているため、デジタルコンテンツや通販といったeコマースサービスに有効です。

最後に、多通貨決済は越境ECに重要な要素ですが、それ以外にもサイトの構築、翻訳、ロジスティクス、コールセンターなど、現地向けにさまざまなサービスを整える必要があります。確かに、越境ECへの機運は高まっていますが、ビジネスとして成功しているECサイトは決して多くはありません。また、決済という意味では、不正利用対策を真剣に考える必要があります。非対面でのクレジットカードの不正利用は、世界的に増加傾向にあり、商品を海外に販売した後に不正が発覚した場合、商品が戻ってこない可能性が高いです。今後、多通貨決済サービスを提供する決済代行事業者は、サイトの運用などを含めたトータルサービスが求められるかも知れません。

多通貨決済(出典:NTTデータ)

MCPでは、商品販売額はECサイトが決定でき、決済に利用された海外通貨に関わらず円で入金される