決済

【連載第22回】 5兆円市場に突入する電子マネーの現状は? 将来的にインターネット決済での浸透に期待

国内でも市民権を得つつある電子マネー。コンビニエンスストアやファーストフード、レストラン、スーパーマーケットなど、比較的小額な支払いで利用されています。今回は電子マネーの最新動向と課題について紹介します。

年々拡大する電子マネーは流通系と交通系が牽引

日本銀行の集計によると、2015年に主要8社の電子マネーで決済された金額は、4兆6,443億円と過去最高の数字となりました。2016年には5兆円の市場に到達する可能性は極めて高いでしょう。

非接触電子マネーの動向をみると、流通系であるセブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」、イオンの「WAON」、「Suica」等の交通系電子マネーが牽引しています。

まず、「nanaco」はセブン-イレブン店頭で、ポイントサービスと絡めた展開を行うことにより、順調に決済件数が伸びています。2015年12月度の利用状況をみると、約15,900万件と決済件数は№1。販促活動もセブン-イレブンやイトーヨーカドーの店舗のスタッフを中心に積極的に展開されています。また、ポイントキャンペーンとの連携で利用を促しています。

一方、イオンの「WAON」は、電子マネーとして初めて、年間2兆円の決済金額を達成。イオンでは、グループ企業のイオン銀行が発行する「イオンカード」がありますが、「WAON」も含め、グループ内での非現金決済比率は6割を突破しているそうです。また、加盟店開拓において注力しているのがWAONの「地域カード化」です。同社ではWAONを通じて、地域の活性化や観光振興などに役立ててもらう取り組みを全国各地で進めています。地域WAONは、全国どこで利用しても0.1%が自治体や地元の団体に寄付され、地域の振興や活性化に貢献するモデルとなり、カードの稼働率も高いとのこと。

交通系となるJR東日本の「Suica」は、約61万4,600カ所(端末台数)と、相互利用先も含め、加盟店が順調に拡大。また、少額決済を中心に幅広い加盟店で利用されています。近年では、全国展開しているチェーン店、ゲーム機、機内販売、観光地などに代表される新しい領域への導入も進んでいます。

電子マネーとしては最も歴史の古い「楽天Edy」でも「楽天スーパーポイント」を絡めた販促施策を積極的に展開。また、スーパーマーケットなどに対し、Edy機能を搭載したカードを発行して、囲い込みに活用されています。

イオンでは数々の地域WAONを発行。画像は「伊勢志摩WAON2016」
イオンでは数々の地域WAONを発行。画像は「伊勢志摩WAON2016」

地域のプレミアム商品券をカード型で提供するケースも

近年では、地域のプレミアム商品券をカード型で展開するケースも見受けられます。たとえば、広島銀行の「HIROCA(ヒロカ)」、盛岡市のプレミアムポイントカード「MORIO-J(モリオ・ジェイ)」、ご当地カード「小松カブッキーWAON」などが発行されており、地域振興に役立てられています。

将来的には、ICカードのマルチアプリケーションを生かし、決済以外の領域へのさらなる活用も期待されます。例えば、一部の交通系カードやWAONカードには複数のアプリケーションを搭載可能な「FeliCaポケット」の機能を搭載。香川県高松市の「めぐりんWAON」では、健康診断の受診や、ウォーキングの歩数に応じてポイントを付与するキャンペーンを実施。また、行政と連携した施策として、ほかにも、体育館、武道館、公園といった公共施設と連携した取り組みを積極的に進めています。

ポストペイ(後払い)電子マネーは「iD」「QUICPay」の二強

電子マネーはプリペイド(前払い)方式に加え、ポストペイ(後払い)電子マネーの「iD」「QUICPay」も発行されています。「iD」は三井住友カード等のカード会社が積極的に推進し、コンビニエンスストアなど、幅広い加盟店で利用可能となってます。また、バークレーヴァウチャーズの電子食事カード「Ticket Restaurant Touch」(チケットレストラン タッチ)では、ポストペイ方式で推進してきた「iD」を、プリペイド方式にも対応可能としました。これにより、各企業が独自に発行していたプリペイドカードを「iD」の技術を用いて発行できるようになっています。

一方、JCBでは、2011年下期から「QUICPay」の発行を再強化していますが、会員残高、売り上げ、利用件数は着実に伸びているそうです。特に、利用件数や稼働会員数などは想定の2倍程度伸びを示しています。JCBでは、エクソンモービルの「Speedpass+」、ANAの「ANA QUICPay+nanaco」など、異形状の「QUICPay」を発行することで、会員の携帯率を高め、モバイルと同様に常に肌身離さず持ってもらう取り組みを行っています。

全国3万以上の店舗で利用が可能な「チケットレストラン タッチ」。iD初のプリペイド対応となる
全国3万以上の店舗で利用が可能な「チケットレストラン タッチ」。iD初のプリペイド対応となる

スタンプやゲームの購入など、インターネット決済での普及に期待

現状、リアルの加盟店で便利に利用されている電子マネーですが、将来的には、インターネットの世界での普及も期待されます。インターネットで電子マネーを利用するためには、FeliCaポートが付いたパソコンやFeliCa対応読み取り端末にかざして行う必要があります。また、スマートフォンやフューチャーフォンの場合は、内蔵のFeliCaチップを利用して決済が可能です。電子マネー支払いのため、クレジット決済時のようなカード番号の入力が不要で、セキュリティ面でも安心なメリットもあります。しかし、たとえばPCで利用する場合には、非接触ICカードリーダーを別に購入しなければならない課題もあります。また、クレジットカードなどに比べ、消費者がインターネットでの電子マネー決済になれていないため、その利用は限定的です。

今後のさらなる普及に向けては、楽天Edyのようなインターネット企業が積極的に告知する必要があるでしょう。電子マネーという性質上、高額な商品の購入で利用されるのは難しいかもしれませんが、例えば、スタンプの購入やゲームといった少額決済では普及の可能性はあると思われます。