• 越境EC
  • 連載第1回
  • 2015/4/9

東南アジアのeコマースを発展させるために必要なこと(前篇)

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はじめまして。株式会社JAPASIANの椿と申します。ご縁あってNP通信でコンテンツをご提供することになりました。私は現在、東南アジアに位置するインドネシアで、市場調査を中心に日系企業進出支援を行っています。東南アジアの成長、そして変化は著しく、ECにおいても確実に市場が広がりつつあります。私のコンテンツでは、海外メディアの記事を活用し、東南アジアのECを取り巻く現状を、現地の肌感と併せてお伝えしていきます。第一回目は、東南アジア全体のEC事情をお伝えする記事をご紹介します。

最近、世界的な経営コンサルティング企業のAT Kearney、及びCIMB ASEAN Research Instituteが、東南アジアのeコマース市場成長における障壁をいかに取り去るか?というテーマに関する報告書を発表した。AT Kerney、及びCIMB ASEAN Research Instituteは、ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community)が本年末までに発足に向かう中、オンライン小売事業社は東南アジアの経済成長に対して重大な影響を与える態勢が整っている、と主張している。

本報告書によれば、現在の東南アジアにおけるeコマースの売上比率は小売市場全体の1%にも満たない。この状況はヨーロッパ、中国、アメリカのようにeコマースが6~8%の売上比率を持つエリアと比較するときわめて低い状況である。しかし、東南アジアにおける安定した中流層消費者の購買力増加、インターネット利用率の上昇、そしてeコマース事業社数の増加などを加味すると、本地域のオンライン小売市場は今後数年の間、年間成長率25%前後で成長していく可能性がある。

近年のASEAN6大国(big six)、つまりシンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、タイのeコマース市場は70億USD前後と言われている。シンガポールが17億USDであり、マレーシアとインドネシアがおおよそ13億USDで次に続いている。この成長を促進するために、ASEANビジネス・クラブ・フォーラムは東南アジアの新興市場がeコマースを次のレベルへ推し進める5つの具体的なアクションを明示している。

1.インターネットアクセスの増加

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東南アジアにおいて、インターネットユーザーの割合は国によって異なる。インドネシアでは、人口のおよそ16%(3,900万人)しかインターネットを利用していない。タイ、フィリピン、そしてベトナムでの普及率も50%以下だ。しかし、シンガポールとマレーシアの普及率は3分の2を超えており、「先進的インターネット経済圏」へと近づいている。この6ヵ国中5ヵ国では、インターネット利用者の60~80%がオンライン上で購買している。しかし、インドネシアだけは例外で、現在のところインターネット利用者の12%しかオンライン購買を経験していない。

シンガポールを除き、ASEAN各国においてブロードバンド及びモバイルでのインターネットアクセスができる人の数は人口の半分に満たない。理由は各国により異なる。インドネシアでは18,000以上の島々をつなぐことが物流上の課題となっている。さらに、「アクセスの不足」がインドネシアの文化における顕著な「都市と地方間の格差」を生んでしまった。同様の現象はベトナムでも発生しており、ホーチミンとハノイの2都市は極端に他都市と異なる様相を見せている。インターネット速度の遅さ、高い費用、そしてインターネット自体に対する認識の低ささえも東南アジアのインターネット普及を妨げる要因となっている。

ASEANはこれらの問題に着手するために2015年度のICT(情報通信技術)に関する基本計画を作成した。地元の投資家たちはすでにブロードバンドやモバイルのインフラに関して強い興味を示している。しかし、報告書は東南アジアがインターネット普及率を高めるためには政府による援助を受けるべきであると述べている。基本計画は、アジア全域に設置した光ファイバー網経由で国境をまたぎ接続性を向上させることや、インターネットの認知度を草の根レベルから底上げするため、小学生を対象にスタートさせることにも言及している。
(インターネット速度競争において東南アジアはどのように立ち振る舞うか?、
を参照⇒https://www.techinasia.com/hows-southeast-asia-performing-internet-speed-race-infographic/

2.新規参入に対する支援

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いくつかの地元eコマース企業が勝者として台頭してきたが、消費者は必ずしも地元に足跡を残しているわけではなく、海外のオンライン小売業者に惹きつけられているようだ。アメリカをベースとするアマゾン、グルーポン、そしてeBayは依然として6ヵ国で最も人気のeコマースサイトである。

根本的原因のひとつとして、地元企業が提供するオンラインサービスに対して世論が懐疑的な姿勢を示していることが挙げられる。その他の大きな問題としては、資金、適切な人材、そして一般的なノウハウ等を含むリソース不足が、ローカルプレーヤーのeコマースに対する能力成長を如何に妨げているか、ということだ。

現在、いくつかのASEAN加盟国政府はこれらの問題を解決するために動き出している。その一例がマレーシアのマルチメディア・デベロップメント・コーポレーション(Multimedia Development Corporation)であり、eコマースサイトを運営する中小企業の上位25社に対し、最大25,000USDの補助金を提供している。

報告書は、楽天やLazadaのようなマーケットプレイスは資金や人材が不足している小規模企業に対して販売促進していくべきだ、とも述べている。なぜなら、これらのサイトを通じて、小規模企業は追加リソースを投下せずにオンライン販売を展開することができるからである。

東南アジアのイーコマース事情を伝えていくにあたり、1回目として包括的な概況レポートを選択した。インターネット大国の日本と比較すると、まだまだASEAN全体を通じてインターネット普及率は低い状況ではあるが、6ヵ国中5ヵ国でインターネット利用者の6~8割がオンライン上での購買を経験していることが示すように、利用者の成熟速度には目を見張るものがある。課題が多いことは事実だが、市場成長はほぼ確実なものであろう。後半ではより消費者視点に近いインフラの状況をお伝えする。