• 決済
  • 連載第25回
  • 2016/9/16
  • 連載EC決済のイマとミライ

決済データを活用したFintech「トランザクションレンディング」に注目

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2015年から2016年にかけて、決済業界でも1つのキーワードとなっているのが「Fintech(フィンテック)」です。ファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語ですが、「ビットコイン」や「ブロックチェーン」などの仮想通貨を中心に注目を集めています。そのFintechでも取り上げられ、海外や国内の決済サービス事業者が取り組みを開始しているのが「トランザクションレンディング」です。

取引履歴を融資に活用海外ではSquareやPayPalも取り組む

「トランザクションレンディング」の“トランザクション”は取引履歴、レンディングは“融資”となります。つまり、平たく言えば、取引履歴に応じた融資となります。すでに海外では、スマートフォン決済サービスを展開する「Square」、ID決済サービスを提供する「PayPal」といったプレイヤーが取り組んでいます。

各プレイヤーにとっての強みは、日々、大量の決済データを処理している点です。過去のデータの推移を活用し、独自の審査を行い、将来性の高い企業に融資を実施。例えば、銀行による融資の場合、申し込み時に決算書や担保、保証人などが必要ですが、それらは不要となるケースもあります。また、特に大きな違いとなるのは融資のスピードです。銀行による融資の場合は、一カ月以上かかることもありますが、1週間以内での融資など、迅速なスピードが特徴となっています。

実際の融資金額については、店舗の売上や成長性などを見極めて、各社独自に決定されるとのこと。

例えば、スマートフォン決済サービスを提供するSquareは、個人事業主や中小企業でもカード決済ができるように、独自構造のリーダーと対応ソフトウェアを開発し、提供しています。同社では、数多くのスモールマーチャント(小規模加盟店)との取引があり、日々の決済データが蓄積されていきます。Squareでは、その中から有望と思われる加盟店に対し、ファイナンスビジネスのオプションサービスとして「Square Capital(スクエア・キャピタル)」を2014年5月28日から提供しています。例えば、個人事業主の場合、店舗開業時に新機材などを購入するといった資金の負担がネックとなりますが、それを支援するプログラムとなっています。2013年の年末から試験的にスタートし、2014年11月時点で、早くも1万件を突破するなど、強い引き合いを受けて本格スタートすることになりました。

Squareでは、これまでの実績や決済取引などを見定め、Square側からオファーを出すこともあるそうです。また、プログラムを受ける企業にアンケートを行ったところ、約85%のカスタマーが高い確率で他の企業等に推薦すると答えました。

Amazonでは、同社の仮想モールの出店者向け融資制度「Amazonレンディング」を実施。Amazonマーケットプレイスの参加企業が対象となり、初回申し込みは最短5営業日、2回目以降は最短3営業日で融資できるサービスを提供しています。

国内でも複数の決済代行事業者がサービスを提供
最短5営業日での融資が可能に

国内の決済代行事業者でも、すでに取り組みが行われています。GMOイプシロン(GMO-EP)では、EC事業者向けのオンライン融資サービス「GMOイプシロン トランザクションレンディング」を、2015年3月5日より開始。GMO-EPの決済代行サービスを利用するEC事業者に対して、日次の決済データをもとに独自の審査を実施して、最短5営業日での貸し出しが可能です。また返済は、申し込みの翌月以降に決済代行サービスを通じてEC事業者に入金される売上金額から、自動で返済される仕組みのため、EC事業者は金融機関に足を運ぶ必要なく、返済漏れの心配をせずに融資サービスを受けることが可能です。なお、貸金業法上の貸出の上限金利は15.0%~20.0%ですが、同サービスは最高でも12.0%(年率)のため、小口融資においても低金利で利用することができるそうです。

また、ソニー銀行子会社のソニーペイメントサービスは、2016年4月25日から、EC事業者向けに「Smartレンディング」サービスを開始。同サービスでも最短5営業日での貸し出しが可能となっています。

新たな動きとして、住信SBIネット銀行は、SBI AXESおよびその100%子会社で決済サービスプロバイダのゼウスと業務提携契約を締結。同契約では、住信SBIネット銀行が提供予定であるトランザクションレンディングを、ゼウス加盟店向けに提供するため共同で開発を推進していくそうです。

ソニーペイメントサービスの「Smartレンディング」サービスのイメージ

ソニーペイメントサービスの「Smartレンディング」サービスのイメージ

ソニーペイメントサービスの「Smartレンディング」サービスのイメージ

銀行でも新たな融資の形を検討へ

今後も国内の決済代行事業者がレンディングサービスを提供するケースは出てくると思われます。その理由として、決済事業だけでは差別化が難しく、手数料率などの争いになることが挙げられます。また、将来性のある企業に対し、レンディングサービスを提供することで、ビジネスを拡大させるとともに、その関係性をつなぎとめる目的もあるでしょう。さらに、将来的な収益性も見込んでのことだと思われます。

なお、こういった状況に銀行も手をこまねいているわけではありません。例えば、横浜銀行では、地域の小規模事業者に新たな資金調達手段を提供するため、「トランザクションレンディングの実現に向けた産学連携によるコンソーシアム」を結成。財務データや統計学、AI等を活用した新しい審査モデルを構築するために、取り組みをスタートさせました。今後は、銀行からも新たなレンディングモデルが生まれる可能性もあるでしょう。

著者紹介

秋山 恭平
  • 株式会社ネットプロテクションズ
  • マーケティング部
  • マネージャー
  • bnr_air
  • bnr_atobarai
  • bnr_frex

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