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  • 連載第1回
  • 2016/9/29
  • EC時代を勝ち抜く人財育成と組織マネジメント

本当のところEC業界って人財不足なの?みんなに取り憑く「人がいないいない病」

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本当のところEC業界って人財不足なの?みんなに取り憑く「人がいないいない病」

こんにちは。大西 理と申します。
90年代後半のインターネット黎明期からECに携わり、事業者側、支援側で経験してきたことをベースにEC運営に関する課題について考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします

EC業界が直面する「人財不足」の慢性化

拡大するEC業界。あらゆる業種がダイレクトに顧客とつながることを望み、マーケットは成長の途を辿っている。そんな成長の一方である課題が聞こえてくる。それは「人財不足」だ。

考えてみれば、ECという事業カテゴリーは本格化してから20年にも満たない産業で、人間年齢に例えると高校生から大学生あたりの若いビジネスなのである。全労働人口から考えてもEC従事者の構成比はそれほど多くはない、それだけに今後もマーケットとしての成長性はあると言える。

市場規模が右肩上がりになっていく中、参入企業は急増。通販企業のEC化は言うに及ばず、大手流通小売業のネットスーパーや総合EC、店舗を有する専門性の高い小売EC、メーカーが直接運営するEC、EC専業小売業など、業種業界の枠を超えてECは広がっている。またターゲットもtoC(対消費者)、toB(対企業)、そしてCtoC(消費者同士)となり、ECビジネスは百花繚乱。
そのため、販売事業者のみならず、広告代理店やシステム会社、EC支援ベンダーも増え、EC業界は慢性的な「人財不足」という課題に直面しつつある。

ITに「魔法の杖」は存在しない!?

企業の経営環境はそれぞれ異なり、課題認識も根っこは同じでもその企業なりに異なる。
EC事業の現場においては、業務は肥大化、複雑化し、慢性的な「人財不足」感を持っているが、経営サイドは必ずしもそう思っていないケースがある。ステレオタイプな「お偉い方」にとってECというのは「仕組み」が動かすもので、ひとたび「IT」という名の魔法の杖が稼働し始めるとオートメーションで何でも動いて簡単に売上が上がっていくと思われている。今時そんな考えの人はいないでしょうと思われるかもしれないが、まだまだそれが現実なのだ。こうした認識は人を増やすどころか、むしろ人を減らして利益を上げろという指示につながってくる。
売上が上がりはじめるにつれて業務ボリュームが増えれば、当然のことながら人的リソースは慢性的に不足しがちとなり、「人がいないいない病」という病を引き起こしてしまう。決しておおげさではなくこれが現実と言えよう。

ECを動かす「人的仕組み」について

では、EC事業にはどんな業務が存在するのか、簡単に棚卸しをしてみよう。
ECの業務は規模の大小に関わらず概ね次のような構成となる。

基本業務

・商品仕入れ、在庫管理
・撮影、採寸、原稿作り(いわゆる”ささげ業務”)
・販売促進企画
・ページ制作
・メルマガ、SNS、ブログ、チラシなどの制作と更新(配信)
・広告運用
・受注出荷管理
・商品出荷
・分析(トラフィック、売上)
・問い合わせ対応
すべてを内製できるケースもあるがそれはごく稀。ほとんどのショップはこれら業務を最小人数で分担し、自社の環境や規模に応じて組織体制も変化させていく。ほんの数名から最終的に数十名規模に成長していくのが理想的だろう。

例えば、4名ほどの人員規模であれば、リーダーがPLをはじめ全体の管理をしながらショップの企画を考え、外注の手配、交渉など行う。ページ制作担当は”ささげ”業務とメルマガなどの制作物を担当、更新(配信)まで行う。バイヤーは商品仕入れ、管理、登録など”ささげ”の一部も担当、そして事務担当は受注処理、出荷手配、事務処理。

これが10名規模になるとどうだろう。この規模は売上も数億円以上の規模になっているため、新規顧客向けと既存顧客向けに別々のプロモーションが必要になり、顧客に対する付加価値提供のため、サービス開発なども必要になってくる。

10名規模での業務割り振り

リーダー(1名):全体を管理しつつ、事業自体の中長期計画を考えたり、スタッフ育成や採用などにも忙しくなる。
販促企画担当者(2名):企画立案から実行までの過程で外注ディレクションも行いつつ、メルマガ原稿やサイト分析なども考える。SNSの企画運用などもここが担当するケースが多い。
広告企画の担当者(1名):新規獲得向け広告担当(広告代理店などと協働)
商品仕入れ・在庫・商品登録(2名)
ページ・バナー制作(1名)
システム担当(1名)
受注管理・問い合わせ対応(2名)

また、この規模になると新たな業務が発生する。SNS専任がいたり、SEO担当がいたり、本店以外にモール担当や卸担当などがいたりするケースもある。
そして、物流、コールセンターはもちろん、ページ制作、広告用クリエイティブなどの制作は外注、それぞれの担当は外注管理も行うようになる。

小規模チームであればチーム全員がゼネラリストとしての役割を求められる。中規模になれば経費予算が多少増えてくるため、業務のパートごとに外注化が進み、ディレクション能力、進行管理のスキルが求められる。そして次第にマネージャー、リーダーの役割が明確となり、チーム全体への目配り、気配り、個人のスキルアップ、事業全体の成長などを考えながら、行動していくことが求められるようになる。

ここまでのまとめ

このようにEC組織は売上が大きくなるにつれて、新規業務や雑務が増える。やがて業務が分担され、システム化による効率アップが図られる、ついには専門性の高い業務が増え、さらなる売上向上が見込まれるようになる。同時に、やりたいことも増えてくるため必然的に「人がいないいない病」に冒される組織が増えてくるのだ。

次回はこの病にどう対処するか、育成やリーダーに求められるスキルについて考えてみよう。