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  • 連載第3回
  • 2016/10/21
  • EC時代を勝ち抜く人財育成と組織マネジメント

ECを成功に導く巻き込み型チームビルディングと人財育成のポイント

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前回まで、EC事業の成長や環境変化において「人がいないいない病」という病が顕在化、中でもリーダー資源が不足している仮説に基づき、どう行動していくべきかという話をしてきた。本テーマの最終回は、EC事業への人財登用、採用時の面接ポイント、組織作りのポイントについて考えてみよう。

異動者/採用者におざなりな発令していませんか?

まずは、社内外人財をECに登用する際のポイントを考えてみよう。EC事業の成長に合わせ、人員を強化することがあるが、たいていの場合、社内から登用(異動)、あるいは新規/中途採用となる。
他部門や社外から異動(採用)してくる方はECチームの業務理解がない。社内異動の場合、外から見ると、自由で楽しそうなイメージを持たれている場合もあるが、実際やっていることは超地味という事実は意外と知られていない。そこで、異動(採用)者には自社EC事業の理解を促すために次のことは最低でも話をしておきたい。

・自社EC売上/利益規模(社内でも案外知らないということがある)
・自社の経営環境にとってECはどんな位置付けなのか
・自社ECの強みと弱み、課題は何なのか
・お客様にはどのような価値を提供できているのか
・異動(採用)者への役割期待は何か

全部当たり前のことじゃないかとお叱りを受けるかもしれないが、その当たり前のことができていないケースが実際にあるのだ。間違っても「このたびECのメンバーになってもらうが、わからないことは同僚や先輩に聞いて一日も早く戦力となってください、まあがんばって!」などとおざなりな会話で終わらせないようにしたい。

次に私の経験をもとに他部署から異動者を受け入れ、やる気にさせるコミュニケーション例を2つお話しする。

コールセンターからECに異動してきた場合

コールセンターのオペレータ出身のTさん、電話の向こうにいらっしゃるお客様の声のトーンや話し方を聞き、様々なことを判断して接客する。お客様は急いでいるのか、迷っているのか、不安に感じているのか、ワクワクしているのか、相手の気持ちに応じて接客する。
時にはクレームから始まった通話がクローズ時にはクレームを鎮めるだけにはおさまらず、アップセルを成功させていたなんていう芸当もやってのける。高い接客品質が求められるが、それはお客様の「声」が聞こえるからだ。
そんなTさん、ECに異動になった途端、顧客との関係性が薄くなったことに不安を持っていた。画面やメールを通してだけの接客に不満だという。ページ制作にしてもこちらの言いたいこと、書きたいことを一方的に押し付けているだけではないか、と。

確かに小売業の接客品質の高さやコミュニケーションの厚み・濃度をチャネル別にみると、店舗>コールセンター>ECの順となる。これは仕方ないことで、ECの特性や可能性をもう少し理解してもらしかない。
私が彼女に言ったのは、「すべてのお客様が電話大好きというわけでもないし、電話が面倒な方だっている。忙しく電話する時間がないという方も大勢いらっしゃる。店舗での接客が嫌だという方もいらっしゃる。そのためにECというチャネルが存在している。関係性が希薄というなら、あなたが電話通販で提供してきた、素晴らしい顧客体験価値をEC上で実現すればいい。ECを取り巻くテクノロジー環境はどんどん進歩している。
昨日までできなかったことが今日になればできる場合もある。ECならでは、かつ、お客様にとって心地よい接客がどうすれば実現できるか、あなたなりに考えて企画していってほしい。そのための協力は惜しまない。」

営業からECに異動となった場合

このケース、希望で来るなら別だが、予備知識なく異動させられるケースもある。私が経験したのは後者。メーカーの営業部門からECに異動してきたYさん、突然のことでよく理解できていない。
Yさんの会社、ECの取扱高は当時まだまだ小さく、彼が営業先に卸す金額のほうがはるかに大きかったのだ。彼にとってみれば扱う(予算)額は小さくなるし、よくわからない業務と対面することでモチベーションが下がりかけていた。

そんな彼には次のような説明をした。
「ECにはあなたがこれまで営業現場では見たことがない貴重なデータがある。そしてそのデータをうまく活用し、次なる一手を考え、すぐに実行することができる環境がある。これらECの結果を分析加工し、営業部門が使えるデータとして提供し、うまく活用してもらう。
それらはその先の取引先にとっても有益な情報となるため、販売元や営業マンの付加価値が上がり、社業発展に大いに貢献できるはずだ。結果、他者から大いに認められることにもつながるのだ。」

業界によって慣習は異なるが、自社製品の最終購入者であるユーザーの属性をぼんやりとしか把握できていないケースはまだ多い。取引先からは販売個数のようなデータは公開してもらえても、そこに属性情報はない。毎日売場に足を運び、買った人を捕まえてインタビューするなんてできることではない。だからこそ自社ECで掴んだデータが生きてくる。
彼はそのデータを定期的に営業にプレゼンし、小売店への提案に生かしてもらうことを実行していく。そうすることで社内的な関わりが増え、EC事業が周囲から頼られる存在になっていくのだ。

EC事業に新人を登用する場合の業務理解の近道

異動者にも共通することだが、自社のECが本店業務とモール業務に分かれている場合、早期にEC業務とはどういうものかを俯瞰できて、広く浅く経験を積むにはモールの店長業務を一通り経験させてみるのがもっとも良い手だと考えている。
モールの運営は規模によりけりだが、受注管理、コンテンツ制作、ページ更新、告知(メール配信)、売上分析、広告運用、顧客対応といった一連の業務があるため、ECの流れを一通り理解するにはもってこいの場と言える。その経験から得意不得意をつまびらかにし、次のステップを考えていければ良い。

最後は採用の話。

EC人財の採用に関して、どういうところをポイントに見れば良いかという相談がくることがある。
私は人事のプロでも何でもないが、これまで自分の部下、同僚の採用に幾度となく面接は行ってきた。参考になるかどうかわからないが、私が見ているポイントについてお話する。

採用において私が見るポイント、リーダー以上は別として、スタッフレベルではECにおける実務経験はあまり問わない。もちろん何かしら経験があることでアドバンテージがないわけではないが、そこまで重要視はしてしない。また、スペシャリストならその深さを聞き、ゼネラリストならどこまで広く対応できるポテンシャルがあるかを確認する。
その上で、以下のポイントを見る。

・未経験の業務にも興味を持ってチャレンジできるタイプか
・何事にも情熱を持って取り組めるか
・現チームスタッフと同じ空間で働いているイメージが湧くか(←これ、結構大事にしている)
・現メンバーに刺激を与えられる人かどうか
・社会性があり、溌剌としている人かどうか
・大人の感性を持っていてアンテナ高く、クリエイティブ感度が高い人かどうか

こういったポイントを見つつ、自社の環境と人財コンセプトに照らし合わせて検討することにしている。
逆にどんな人は採用すべきじゃないのかという質問もあろうかと思うが、あくまで個人的な意見として述べると、

・チームに刺激を与えられない(と思われる)人
・チームに付加価値をもたらさない(と思われる)人
・チームで戦えなさそうな人
を挙げておく。参考になれば幸いです。

まとめ

ECは、機械が何でもやってくれるわけではない。考えるのは人、動かすのも人。管理するのも人。販促企画を考えるのが得意な人、制作ディレクションが上手な人、広告運用に向いている人、数字が好きで分析が得意な人、何ができるかわからないが、とにかく走れる人、いろんな人がいていいと思うし、その「人」が集まってチームとなり、戦っていくわけである。
「人」にはそれぞれ成長期がある。その成長の「旬」間を逃すことなく、役割と責任をあてていくと伸びる人間は思った以上の成長を遂げる。
人財は機械の中で育つわけではなく、人の中でのみ育つということを決して忘れてはならない。事業と人に覚悟をもって投資すれば「人がいないいない病」は必ず解決できる。

リーダーには幅広い業務経験とチームを引っ張るリーダーシップ、そして短期的な結果に一喜一憂しない人間力が求められる。スタッフにはEC事業に対するどん欲な姿勢、そしてミスを全員でカバーする風土。全員に求められるのは苦しい時こそ笑顔を絶やさない精神力。
また、クライアントとチームとして戦ってくれる外注先とのパートナーシップ。そしてこういうチームを厳しくかつあたたかく見守ることのできる、理解ある経営者(層)。これらがすべて揃えば最強のチームとなるだろう。

最後に

私は黎明期からECに従事しており、それはそれは肩身の狭い思いをしてきた経験がある。(当時の)会社にとってECは海のものとも山のものともわからない存在。自社にはない仕様やフォーマットを要求したり、インフラの改善を要求したりするばかりで手間がかかる割には売上が大変小さいものだった。「君らのようなチームに大切な顧客情報を使わせたくない」とまで言われたこともある。
今なら考えられないが、自分でメルマガ書いて、自分のパソコンからBCCで会員にメルマガを配信していたここともある。そんなころから考えれば今の環境は天国。もちろん今は今の難しさもあるが、ずっとやってきてよかった。ECは楽しい。PDCAサイクルは早いし、小さな改善の積み重ねが大きなインパクトに変わることもある。テクノロジーの発展に伴い、リアル接客に少しずつ近づけるようなこともできるようになってきた。今、ECに従事している方々はそういう楽しさを周りに伝播させていっしょにこの世界を盛り上げていってほしい。

以上で「EC時代を勝ち抜く人財育成と組織マネジメント」は終了です。

著者紹介

大西 理
  • 株式会社ヌーヴ・エイ デジタル戦略部

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