マーケティング

【連載第11回】 MasterCardがグローバルに展開するデジタル・ウォレット「MasterPass」の国内普及は実現するか?

Amazonが開始した「Amazonログイン&ペイメント」が注目を集めていますが、個人的に国内での展開が楽しみなのがMasterCardのデジタル・ウォレット・サービス「MasterPass」になります。国内のECサイトの皆さんはほとんど知らないサービスだと思いますが、海外では急速に利用できる加盟店が広がっており、日本でのサービスリリースも予定されています。

「MasterPass」は3つのサービスに分類
オンラインのチェックアウトに加え、対面決済に対応

MasterCardのリリースによると、「MasterPassは、オンラインでも実店舗でも、モバイル、タブレット、PCなど、さまざまな端末を利用して簡単かつ安全に買い物をすることができる、クラウドを活用したデジタル決済サービス」と説明されています。この文章だけ読むと、どういったソリューションなのかイメージがわきにくいと思いますが、具体的には以下の3つのサービスに集約されます。

・オンラインでの「チェックアウトサービス」
・「ウォレット・サービス(モバイル財布)」
・「高付加価値サービス」

「チェックアウトサービス」は、日本での「Amazonログイン&ペイメント」、楽天の「楽天ID決済」、ヤフーの「Yahoo!ウォレット」、PayPalといったサービスのようなID連携型の決済となります。複数のクレジットカード等を登録することができ、予め登録されているクレジットカード情報や配送先情報を活用し、IDとパスワードのみで支払いが可能です。MasterPassは、他のID決済サービスと同様に、決済処理がスムーズに済み、カード情報を入力せず、安全に決済できる簡易性が特徴です。また、対面でのQRコードでの決済に加え、将来的にはNFC、Bluetoothなどを活用した支払いも対応していくということです。

「ウォレット・サービス」は、さまざまなカードをモバイルアプリケーションに登録できるサービスとなります。MasterCardでは、ワンタイムパスワードによるセキュリティの強化といったオプション機能も用意されています。「ウォレット・サービス」は大別すると、以下の3つに分類されます。

(1)MasterCardブランドで展開するサービス
(2)MasterCardがホスティングを行いますが、パートナーのブランドで展開するサービス
(3)ホスティングやブランディングも導入サイトが行い、共通で利用できるAPIを提供するサービス

そして、「高付加価値サービス」は、ポイント特典などのカスタマーロイヤルティプログラム、デジタルクーポンといったオファーを提供できる仕組みとなります。また、MasterCardの特典サービスである“プライスレスシティ”キャンペーン情報なども提供できるということです。

世界4万店舗以上でサービスが利用可能

日本でも「Salon de Wallet」で対面・非対面決済を提供

MasterPassは、国際ブランドのMasterCardが提供するため、世界中で展開できることが最大の強みとなるそうです。また、MasterCardブランドだけではなく、Visa、American Expressなど他ブランドのカードも導入できます(JCBは非対応)。

現在、米国、カナダ、オーストラリア、イギリス、イタリアでサービスが展開されており、報道によると4万店舗で利用されているそうです。また、アジア・パシフィックエリアでは、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、中国で展開されています。

そのMasterPassですが、日本初の事例として、ハイパーソフトの美容サロン情報スマートフォンアプリ「Salon de Wallet(サロン・ド・ワレット http://salondewallet.com)」と連携した、決済機能の開始が発表されています。リリースでは2014年末から2015年初頭の開始となっていましたが、サービス開始は遅れているようです。

ハイパーソフトは、全国2,000以上のトップサロンに「Salon de Net/Salon de Wallet」を提供しています。「Salon de Wallet」では、美容サロンの顧客がヘアサロン、ネイル、エステ、マッサージなどの会員証をスマートフォンで一元管理できる機能や、美容・ヘルスケア・ファッションに関する新製品情報やクーポンを提供しています。

今回のMasterPass決済では、オンラインでの「チェックアウト機能」と、店舗でのQRコード決済の両方に対応。具体的には、アプリ内で販売されている美容関連商品をスマートフォンからネットショッピングする際に、最低限の操作で簡単に決済を完了できます。また、サロンの利用者は、店頭の施術を受ける席において、スマートフォンでQRコードを読み取るだけで、お財布やクレジットカードを取り出すことなく決済が可能です。私自身、MasterPassを使ったことはありませんが、サービスが開始された暁にはぜひ試してみたいと考えています。

Visaでもグローバルで「Visa Checkout」を展開
世界中の加盟店、カード発行会社との接点が武器に

なお、国内でのサービスは発表されていませんが、Visaでも2014年7月に「Visa Checkout(ビザ・チェックアウト)」と呼ばれるサービスを発表しています。Visa Checkoutは、PCやスマートフォンといったデバイスからオンラインで商品代金の支払いが可能です。

商品を購入する際は、オンラインでVisa Checkoutにアクセスして、ユーザー名とパスワードを最初に登録。その後、Visaのデビットカードやクレジットカード等を利用して、販売元のサイトやアプリにアクセスしたまま、PCやモバイル端末から買い物が可能になります。

まずは、2015年7月16日より、米国、カナダ、オーストラリアでサービスを開始。さらに開発者向けに、Visa Checkout用のSDKファイルや関連するドキュメンテーション、サポートプログラムも用意されています。

Visa は、2015年末までに米国、オーストラリア、カナダに加え、アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、香港、ペルー、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ、アラブ首長国連邦でのサービスを目指しているということです。

MasterCardやVisaは、これまで国際ブランドとしてサービスを提供しており、世界中で数多くの加盟店網を有しています。「MasterPass」や「Visa Checkout」も両ブランドが国際的に力を入れているサービスであり、国内での展開にも期待したいところです。普及に向けては、加盟店への導入はもちろん、国内でクレジットカードやデビットカードを発行するイシュア(カード発行会社)がどれだけMasterPassに対応するかになると思われます。

*画像は「MasterPass」による決済イメージ(出典:MasterCardのプレスリリース)