マーケティング

【連載第2回】EC時代を勝ち抜く人財育成と組織マネジメント 人財不足のカギはリーダー?
これからのEC従事者に求められることは何か。

前回、EC事業の成長によって様々な業務が増え、必然的に「人がいないいない病」に冒される組織が増えているお話をした。今回は求められるスキルや足りないと思われる部分はどこなのかを考えてみたい。

ECスキル、ずいぶん変化していると思いませんか?

自社の経営環境によってEC事業の人員やフォーメーション、求められる人財スキルは当然異なる。ひと昔前(15年前)と現在のEC事業において求められるスキルも変化してきた。
例えば、指標となる数値。テクノロジーの進歩と共に見えるものも変わってきた。売上と顧客数(単純なセグメント)、基本的なトラフィック(PVとかメルマガ配信数)だけしか追ってなかった時代と比べると、隔世の感がある。
デバイスは増え、チャネル間の行き来なども計測できるようになり、それらがリアルタイムに解析できる時代となった。分析に活用できるデータ量は大幅に増え、施策も複雑化している。

ECのみならずリアル店舗、オフラインメディアとの連携も進み、CRMの設計はより複雑になっている。また、ソーシャルメディアの台頭により、企業(ブランド)がダイレクトに消費者とつながるようになったことで、ロイヤルティを強めていくにはどういったブランド体験が提供できるかなど、ECにおいてもこの界隈の土地勘が必要となってきた。
その結果、気がつけばKPI祭りとなるほどウォッチしていくべき”重要”指標が多くなり、お客様に向いて仕事をしているのか、KPIのために仕事をしているのかわからなくなっているケースも多いと聞く。
事業規模によってはデータ分析に長けた専任者が必要になり、スマホファーストが叫ばれる中、スマホのUI/UXへのケアも出てくる。また、知らなかったでは済まされないような事業を取り巻く各種法規制や広告ガイドラインの知識など業務スキルは多様化、複雑化している。正直この人数でやってられるはずがない!と心の叫びが聞こえてくるようだ。

ECをまとめるリーダーがいないのはなぜ?

各所で人財不足と人財育成の課題を挙げる方に出会う機会が増えていると述べたのは、こうした多様化・複雑化する業務や必要なスキルの変化なども背景にあるのではないかと感じる。
中でもよく話の中で出てくるのはEC事業における「リーダー人財」の不足。

先日お会いした某製造業のEC事業のチームリーダーは、突然の人事異動で営業部からEC部署のリーダーに就いた。EC事業を立ち上げた部長が会社を辞めたからだそうだ。すべてはその方に託された。部下は一人。右も左もわからないし、部下や外部パートナーにどう指示を出していけばよいかわからないと嘆く。失礼ながら建前は「EC事業は利益率が高いのでがんばって伸ばせば会社にも貢献できる」としながらも「なんてことだ、ECなんてわからないよ、誰かどうにかしてほしい」という本音も見え隠れする。このように経験値が足りないのに他部門に異動するという例はいくらでもあるし、この方のように営業→ECという異動も当然ある。
この場合は、ECにおける業務理解とマネジメントスキルをフォロー教育していく環境が必要かもしれない。

多くの現場では、「育成する時間などないからとにかくやってくれ」だろうし、それになんとか応えるリーダーたちが存在するのも事実。
日本の旧来型の美しい成長ステップは、スタッフからチームリーダー、マネージャーを経て、部門責任者。このように上位職に上がっていくことなのかもしれないが、みんながみんな、教科書通りの成長ステップを登るわけではないし、管理職を目指すわけではない。自分が担当する業務を深く知り、スキルに磨きをかけていく中で、次にあるステップがマネジメントではなく、そのスキルとノウハウを持ったまま専門職として上位職になる方もおられる。あるいは自分の手に就いた職を活かすべく、活躍の場を求めて別の事業社に移る選択をする者が多く存在していることも現実なのである。WebやITといった専門性の高いスキルが求められる分野でそのスキルを持つ人は特にその傾向があると思う。

この傾向がゆえに、ひとつの組織の中で上位マネジメントをステップとする人物が少なくなり、結果、マネージャーや部門責任者に成長していく人物が(企業の)中から育っていないのではないかと推察する。

リーダーに近道なし、好きこそEC成長のスキルなり

ECにおいて「リーダー」が不足していると仮定してみたがいかがでしょう。「うちはちゃんとリーダーがまとめているよ。」「うちはまだまだだな。」など意見は分かれるところではあるが、EC事業のリーダーはかくあるべきを私なりに考えてみたい。

ECやデジタルマーケティングの界隈は、カンファレンスやセミナーといった座学の機会が非常に多い。ツールベンダー主催の事例セミナーも多く存在し、私もたまに参加してみるが、なかなかの盛況ぶりである。他社の成功事例を耳にし、「あれはヒントになるなあ、今日聞いたことを明日からと言わず今日から実践!」などと鼻息荒く会場を後にするも、翌日になると現場にある近視眼的な課題と向き合うことが精一杯なのと、他社の事例が自社の環境に当てはめられなく、おぼろげながら考えたことが実践できず塩漬けになる、なんてことは往々にしてあること。
自社の課題が他社の成功事例で簡単に解決できるほど世の中甘くないことをEC従事者、特にリーダーになる人には理解してほしい。また、バズワードに惑わされることなく、本質的な部分を忘れずに、徹底した顧客目線で業務に取り組んでいただきたい。

EC業界において、数多くの実績を上げられているスター選手たちは何人もいらっしゃるが、皆さん「育成」されてそこまで登りつめているわけではないと思う。さまざまな経験を積み、偶然あるいは必然的にそのポジションに就き(就くチャンスを与えられ)、どん欲にチャレンジし、成功と失敗を繰り返し、結果を残して来られてきた方ばかり。
最初からリーダーだった人はおらず、むしろ、「現場」を大切にし、そこで培われてきたものがひとつずつ確実に花開いたというべきではないだろうか。そして、何よりWebやECが好きで好奇心旺盛なところが共通点だと感じる。

このコラムを読んでいる方には様々な立場の方がいらっしゃると思うが、ECの現場で実行力となる方は、自らのスキルとノウハウをどん欲に磨き続け、チームに貢献することを考えてほしい。チームをまとめる立場の方なら、後輩や部下、同僚にナレッジを共有し、どんどんチャンスを与えて欲しい。そして、いっしょに悩み、成功したら思いっきり褒めてあげ、失敗したらなぜダメだったかをいっしょに考えてあげよう。

ここまでのまとめ。

人財不足というものは、事業の成長過程の中で起こるひとつの課題に過ぎない。
売上をあげるために、顧客を増やすために、知恵を絞ってチャレンジし続けるように、人財不足を正面から受け止め、内部施策(育成と挑戦、そして権限委譲)、外部施策(採用)に知恵を絞って実行していくほかない。
ただ「人がいないいない」と叫んでいても何も解決しないのである。

次回は、新任(新人)育成と採用について、お楽しみに。