マーケティング

【連載第5回】大西理の「通販/EC業界、いま話したい人」 【BEAMS 矢嶋正明さん Part3】
BEAMSが理想とするECとリアル店舗の関係性

大西理の対談シリーズ、第二回のゲストは、ビームス開発事業本部EC統括部副部長の矢嶋正明さん。Part3では「BEAMSが理想とするECとリアル店舗の関係性」の話題を中心にお送りします。

大西さん)
先程、「ECと店頭での販売は同じだ」といった話題も出ましたが、ビームス様では2016年9月のサイトリニューアル以降、顧客IDだけでなく、在庫も店舗とECで全て連携されていますよね。統合してどのような効果がありましたか?

矢嶋さん)
まず、社内の関係性と言いますか、ECの捉え方が前より自然になってきたように感じます。例えば、店舗でお買い物をされたお客様が、会員登録をする場所はECとの統合サイトになります。マイページでポイント確認をしたり、お客様がサイトを使って行っていただくと、スタッフのスタイリングなどを見つつ、商品の在庫確認なども一緒にできます。

これまでECと店舗での溝がなかったかといえば、必ずしもそうではないですが、お客様もスタッフも自然にECと繋がるプラットフォームになったことが大きいと感じています。

また、リニューアル時にECサイトの運営を内製化したので、販管費が圧縮するなど、利益面でも良い影響が出ています。元々ECの利益率は高いのですが、フルフィルメント分の経費と、直営する上での費用はしっかり精査するべきかと思いました。もちろん、ノウハウが何もないときは外部に頼みながら運営する必要がありますけど、お客様との繋がりを深めるために手をかけたり、利益を出すことも含めて直営化しました。現在は、商品の写真撮影や発送、カスタマーサポートも自社で行っています。

大西さん)
利益率の観点から見ても、これからの小売業にとってECが成長のドライバーになるのは間違いないですよね。そんな中、これからのファッション業界において、ECと店舗の住み分けはどうなると考えていますか?店舗がなくなってしまうのでは?と言われることもありますし、実際、在庫を持たないショールーム店舗も海外ではありますよね。

矢嶋さん)
私は、ファッションは店舗でのショールーミングと、ECでのウェブルーミング、どちらも必要だと考えています。

生活必需品などのコモディティ化された商品であれば、ひたすら効率化された方法で購入できればいいので、店舗の役割は限られるかもしれません。しかし、当社が扱う商品のように嗜好性が高いもの、こだわりが反映されやすいものに対しては「お金や時間をかけても構わない」という購入マインドは残ると思いますし、お客様はネット・雑誌・SNSなどのメディアを駆使して、様々な情報を取りにいくと思います。

特に、ファッションの場合は、消費者にとって「試着」が必要なプロセスだということは、ECサイトのCVRや買い回りデータを見ても明らか。だから、リアルの店舗の役割は残り続けると思います。いろんな手段で情報に触れた上で、最後にどこで買うか。それは、ECでも店舗でもどちらでも良いと考えています。

大西さん)
webで見て店舗で買うか、店舗で見てwebで買うかですよね。

矢嶋さん)
どちらもありますよね。だから、ECでも店舗でも、提供するサービスと情報は統一したい。SNSも含めて、どのチャネルからでも等しく情報にタッチできるようにしたいと考えています。その上で重視しているポイントが、スタイリングやブログなどのスタッフ投稿コンテンツです。本や雑誌の情報を信じるのと同等かそれ以上に、店頭スタッフからの情報を参考にしてくれるお客様がいらっしゃるので、個性を活かした情報発信は途切らせず、もっと加速させたいと思っています。

ただ、お客様とスタッフのコミュニケーションやブランド体験の場という意味では、店舗に強みがあります。だからこそ、もし仮に店舗よりECの売上げ比率が増えてしまう時代が来ても、店舗はあまり減らしたくないと思っています。その場合、ECの方で利益を担保して、店舗をECが支える構造になればいいのではないかと。

photo05

大西さん)
私自身も、店舗という存在は絶対なくならないと信じていますし、なくなったら寂しいと思います。一方で、ECのほうが1人のお客様に対して立体的な接客ができるとも考えています。店舗送客ができますし、連動した機能も持てる。購買行動をバックに、接客できるプラットフォームとしての役割も担っているように思いますね。

矢嶋さん)
まさに、ECではいろんな情報を収集した上で提供できますからね。商品提案というところでは、我々もレコメンドエンジンを導入していますし、MAや将来的にはAIを活かしたレコメンデーションも積極的に活用したいと考えています。ただ、私は勝手に「ヒューマンレコメンデーション」と呼んでいるのですが、人間がおすすめする良さは、できるだけ残し続けたいなと考えています。

テクノロジーと人間、両方あっていいと思うんですね。その上で、どちらを選択するかはお客様にお任せする。ただBEAMSらしさを出すのはブランド愛を持っている人間だと考えているので、機械と人間がどちらも共存できるサイト設計にしています。また、ECやWEBの中心に人がいるということを意識するため、最近は「スタッフのオムニチャネル化」という言葉をよく使っています。オムニチャネルと言えば、一般的には在庫のオムニチャネル化の話をさしますが、それだけでは不完全かなと。できれば人が介在することも含めたい。元キタムラの逸見さんは「人間力EC」とも仰ってますよね。

結局「BEAMSは何の専門店なの?」と言われたら「品揃えの良さとコーディネート提案の専門家集団」だと思っています。お客様に「こういう着こなしが良いと思いますよ」提案するのが役割。その中でECは、接客場所がweb上に変わっただけで、自分たちの軸を大事にしたツールになればいいと考えています。

大西さん)
「らしさ」を失わないことが、成長の支えになっていると感じます。

矢嶋さん)
先輩方も「自分たちの役割を忘れるな、BEAMSマインドを楽しむんだぞ」と思っているのではないかと、私は勝手に思っていますね。

大西さん)
矢嶋さんのマネジメントの本質が垣間見えた気がします。私も矢嶋さんの部下になりたい(笑)。では、そうしてECにできることが増えたとしても、リアルな場でしかできない接客とはどのようなものだと思いますか?

矢嶋さん)
やはり「会話の中から生まれてくる接客」でしょうね。単に「あなたにはこれが似合いますよ」という一方的な提案ではなく、趣味を絡めた会話や雑談から生まれる提案。音楽やキャンプとかなんでもいいのですが、例えば、サーフィンを中心としたアウトドアアクティビティを提案するショップや売り場でサーフィン好きなスタッフのところに行けば、ボード選びから、サーフィン話をしながら好みに合いそうな洋服も提案してもらえる。サーフィンを趣味とする人間しか知り得ない情報を交換しながらの提案になるので、現段階では「AI」では実現するのは難しい領域だと考えています。将来的にはできちゃうかもしれないですが。

photo06

大西さん)
例え実現できたとしても、面白そうとは思えないですね。直接話すことで、人の熱量が伝わるわけで。いくら高性能なレコメンド機能ができても、人の内側から出てくる熱量は実装できないと思いますし、そこを大切にしたいですね。

今回、矢嶋さんのお話を伺って、ファッション小売業の中でECと店舗、それぞれのチャネルが果たすべき役割がさらに明確になり、ある意味心が奮い立ちました。私自身もがんばらないといけないと思うと同時に、これからもビームス様を応援しています。このたびはありがとうございました。

Part1「BEAMSのDNAを引き継ぐEC人財の育成

Part2「個人を押し出すBEAMSのDNA